*あらすじ*
姫がまだ生きていることを知った王妃ヘルミーナは、黒魔女の本性を現し、自らの手で姫を亡き者にすることを企む。
老婆に化けた王妃ヘルミーナに騙され、毒薬を飲まされたアイゼル姫。
妖精さんたちが帰ってきたときにはすでに姫の息はなかった!
妖精さんたちは北のお城に住む王子に助けを求めようとするが ...。
さて、我らがアイゼル姫の運命やいかにっ!
![]() |
「妖精さんが王子様を呼びに行ってまもなく。 がさがさがさ。 家の近くの茂みが揺れ、こんな声が聞こえてきました。 『おっかしーな...、この辺のはずなんだが』 そして現れたのは、鎧で身を固めたひとりの若者でした。 |
![]() |
「その若者は、夢の中で助けを求める姫君を探しに、森へやってきたのでした。 夢のなかの姫君は、森の奥深くでこんこんと眠っており、彼の頭のなかに『助けて...助けて...』という声が響く。 そんな夢を何度も見て、気になった彼は夢の記憶を頼りに、眠る姫君を探しにやってきたのです。 |
![]() |
「息絶えたアイゼル姫の周りに集まっていた妖精さんたちは、その突然やって来た若者をいっせいに見つめました。 『な...何だ、お前ら?』 一瞬、面食らった彼は、妖精さんたちの輪の中心に倒れている姫君に気が付きました。 『...?!』 |
![]() |
「妖精さんたちはひそひそ、もそもそと囁きます。 『だれ、この人?』 『さあ?』 『でもリッパなかっこうをしているよね。騎士さまかな』 『そんなことより今はお姉さんが』 |
![]() |
「『お姉さんのことは北のお城の王子さまにお願いするんじゃなかったっけ?』 『でも早くなんとかしないと』 そして、ひとりが若者に向かって言いました。 『すみません、ボクらのお客さんが倒れてしまったんです。このお姉さんを助けてくれませんか』 |
![]() |
「『倒れたって、一体どうしたんだ?』 首をひねりつつも、ただごとではない雰囲気に表情を引き締め、若者はアイゼル姫のそばにひざまづきました。 アイゼル姫の顔は血の気がひき、そっと触れたその頬は、ひんやりと冷たくなっていました。 『(これは...ヤバいんじゃないか?)』 そう思った彼の頭の中に、夢で見た姫君の姿が重なりました。 |
「森の中。死んだように眠る、美しい姫君。 『ひょっとして...この人が俺の探していた姫君?』 夢の中のことゆえ、彼は夢の姫君の顔をはっきり覚えていません。 しかし、この女性こそがその姫君のような気がしてきました。...ちょっと違うような気もするのですが。 |
|
![]() |
「『助けを呼んでいたのは君なのか? だとしたら...俺は...』 間に合わなかったのか? その言葉は、すんでの所で飲み込みました。すがるような目で見てくる妖精さんたちに聞かせたくなかったからです。 |
![]() |
「『もう少し、俺が来るのが早ければ...姫...』 言葉を紡がない姫の唇に、彼はそっと顔を寄せていきました。 唇と唇が重なる、その寸前。 『待ちたまえ!』 |
![]() |
「鋭い声を発したのは、白い馬に乗った気品のある若者でした。 彼こそが、北のお城に住んでいるノルディス王子です。背後には、彼を呼びに行った妖精さんを乗せています。 『ダグラス、今、君は何をしていたんだ?』 素早い身ごなしで馬から下り、ノルディス王子はダグラスと呼ばれた騎士に近づいてきました。 |
![]() |
「
『無抵抗の姫君に、いかがわしい行為をしようとしていたように見えたが?!』 騎士ダグラスは、顔を紅潮させながら彼のほうに向き直ります。 『王子! それは誤解です。俺はただ』 ノルディス王子は、細剣をダグラスに突きつけました。 『君には失望したよ...。もはや、君は我が王家の騎士にふさわしいとは、とても言えない』 |
![]() |
「騎士ダグラスもまた、立ち上がって腰の剣に手をかけました。 『王子...。いくら王子といえども、あまりにもひどい侮辱』 『やるのか?』 『我が名誉のため、俺はあえてあなたに剣を向ける!』 若い騎士と王子が、武器を手にして、はっしとにらみ合ったその時。 |
![]() |
「『待って! 待ってください!!』 駆け込んできたのは、髪を短めのボブスタイルに切りそろえた、愛らしい姫君。 『ん!? 君は...』 『エリー!!』 騎士ダグラスとノルディス王子は、彼女の顔を見るなりほぼ同時に声をあげました。 |
![]() |
「『王子? エリーって、まさか彼女は』 騎士ダグラスに問われて王子は、うなずきました。 『ああ。彼女はエルフィール姫、呪いにかかって離宮に閉じ込められていた我が妹だ』 『離宮に...間違いない、夢で俺に呼びかけていたのは彼女だ』 |