「あれ? その声は・・・」
光の向こうから、若い女性の声。同時に、光が近づき、同じのランプの光だとわかる。
エリーを先頭に、アイゼル、ロマージュが足元を気にしながらやってくる。
「あれえ、ダグラスじゃない!? ノルディスもいるんだ。偶然だねえ」
エリーの言葉の、あまりのわざとらしさに、額に手をやり天を仰ぐダグラス。しかし、ここは手はず通りに進めなければならない。
「エリーか!? びっくりしたぜ。俺たちは、アルベリヒとかいう綿帽子を探しに来たんだけどよ・・・」
今度は、セリフを棒読みするようなダグラスの声に、エリーがため息をもらす番だった。
(ダグラスって、絶対に役者には向かないね・・・)
「ふうん、そうなんだ。じゃあ、あたしたちも探してあげるよ。そうだ、ふたりずつ、手分けしたらどうかなあ?」
まだ多少のわざとらしさは残っているが、てきぱきと指示を始めるエリー。
「あたしとダグラスは、あっちの方を探してみようよ。ロマージュさんたちは、向こうの反対側を。アイゼルは、ノルディスとこのあたりを探してみたらどうかな?」
そして、ダグラスを追い立てるように、エリーは鍾乳石の壁の向こうに消える。
「あ、あの、ちょっと・・・?」
ノルディスが気付いた時には、ルーウェンの姿もロマージュの姿も消え、アイゼルだけが傍らにたたずんでいた。
◆Episode−5
「おいおい、そろそろいいんじゃねえのか。もう十分に離れたぜ」
息を切らしたダグラスが、足を緩める。
「あはは、ダグラス、協力ありがとう。こんなロマンチックな鍾乳洞の中だもの、アイゼルもきっとうまくいくよね」
「ほんとに強引だよ、おまえは。それにしても、さっきのセリフは何だ。あれじゃ、学芸会の幼稚園児の方がまだましだぜ」
「何よ、ダグラスこそ・・・きゃっ!」
ふざけてダグラスを小突くまねをしたエリーが、ごろごろした石に足をとられ、転びそうになる。思わず、肩を抱くようにエリーの身体を支えるダグラス。
「おい、大丈夫か、しっかりしろよ」
「う、うん、ありがと」
ふたりの身体が触れ合ったのは、ほんの一瞬のこと。だが、エリーの心臓は思いがけず、早鐘のように打っている。頬に血が上っているのがわかる。
(ど、どうしちゃったんだろ、あたし・・・)
ダグラスはダグラスで、エリーの肩のぬくもりと柔らかさが、熱いほどに手の感触として残っていた。
(な、何だってんだ? 俺、どうなっちまったんだ?)
ふたりは、互いにそっぽを向いたまま、次の言葉を探していた。
その時・・・。
ランプの炎が、不意に消えた。
↑昔描いた絵ですが・・・この投稿の元になりました絵です
「きゃっ!!」
「何だ!?」
暗闇の中で、ふたりがあわててあたりを探る。
「おい、大丈夫か、さあ、俺につかまってろ」
「うん」
ダグラスのたくましい左腕に、エリーの右手がかるく触れ、やがてしっかりとつかまる。
「くそ、それにしても、いったい何だって、急に消えやがったんだ、このランプは? 洞窟に入る前にしっかり満タンにして来たってのによ」
「あたしもだよ。おかしいなあ・・・」
「お、おい、あれ・・・」
ダグラスの声がかすれる。エリーも、同じものを目にした。
「きれい・・・」
ふたりは言葉を失い、互いに支え合うようにしながら、その光景に見入っている。