◆Episode−3
翌朝はやく。
ザールブルグの外門から北に向かって歩きはじめた3人連れがあった。赤い錬金術服に、オレンジ色の錬金術服。もうひとりは、南国ふうの肌の露出が大きい白い衣装をまとった踊り子姿だ。
エルフィン洞窟に向かうエリーとアイゼル、そして、護衛として同行している踊り子のロマージュである。
「さあ、張り切って行こう!!」
先頭に立ったエリーが、アイゼルを振り向いてにっこり笑う。アイゼルが大切そうに持ち運んでいる小物入れの中に、ノルディスへの誕生プレゼントが入っていることを知っているのだ。
「楽しそうね。まるで遠足に出かける子供みたい」
ゆったりした口調で、微笑みながらロマージュが言う。
「それはそうですよ。今回は特別なんだもんね〜、アイゼル」
目配せするエリーに、
「ばかね。何言ってるのよ」
とアイゼルは取り合わない。でも、瞳は笑っている。
「なんか、あやしいわね。ねえ、エルフィン洞窟には、どんな趣向があるの?」
ロマージュの問いかけにも、ふたりは答えない。ただ、時おり思い出したように顔を見合わせて、笑みを浮かべる。そんな時、つられたようにロマージュも微笑む。
昇り行く朝日に照らされて、いつになく楽しげな3人の道中は続いていく。
その半日後。
同じ街道を、同じ方角に向かって進む男同士の3人組。錬金術服にマントをはおったノルディスの小柄な姿と、青い聖騎士の鎧に身を包んだダグラスのたくましい姿。そして、もうひとりは、赤い皮鎧に緑のマントの冒険者姿だった。
「いや〜、連れができて良かったよ。ひとりで北へ向かうには、ちと物騒だしな。ま、急ぐ旅でもなし、あんたたちに付き合うのも悪くないや」
黙りこくって歩くダグラス、ノルディスと対照的に、先ほどから喋りっぱなしなのは、冒険者のルーウェンだった。以前、ザールブルグを根城に冒険者稼業をしていたルーウェンは、最近ふらりと旅から舞い戻ってきたのだが、偶然、外門を出る時に一緒になり、そのままふたりにくっついて来たのである。
「おいおい、俺たちゃ遊びに行くんじゃないんだからな。そこんとこは、ちゃあんとわかってくれよ」
釘をさすダグラスに、気楽な口調でルーウェンは答える。
「ほいきた、わかってるよ。ふたりより3人。人数が多い方が、探し物には役立つからねえ」
ノルディスは、街を出た時からずっと、難しい顔をして考え込んでいる。
傾きはじめた陽に追われるように、3人は足を速めるのだった。
◆Episode−4
「さあて、着いたぜ。さっそく探しはじめるとするか」
ランプに火を入れながら、張り切ってダグラスが言う。
ごつごつした岩に囲まれてぽっかりと口を開いているのは、エルフィン洞窟の入り口だ。
「ところで、その綿帽子・・・アルベリヒとかいう代物は、どのあたりにいるんだい?」
早くも洞窟に足を踏み入れようとしているルーウェンが、振り返って尋ねる。ゆっくりと身支度しているノルディスが答える。
「さあ・・・。少なくとも、今は冬ですから、入り口の近くにはいないでしょう。いるとすれば、寒さが避けられる、洞窟の奥の方だと思います」
「よっしゃ、そしたら、奥の鍾乳洞の方が怪しいってことだな」
ダグラスが、我が意を得たり、という調子で叫ぶ。
「あんた、詳しいね」
ルーウェンの言葉に、口ごもるダグラス。
「ま、いいじゃねえか、とにかく、出発だ!」
赤茶色の岩肌が、ランプの光に照らされ、異様な雰囲気をかもしだしている。ザクザクと岩のかけらを踏む足音に混じって、時おり、湧き水のしたたる音が響く。
しばらく同じような風景が続くが、一本道のため、迷うことはない。今のところ、目的のアルベリヒはおろか、生き物の影ひとつ見当たらない。
3人は、黙々と歩を進める。表では饒舌だったルーウェンさえも、洞窟の静寂を乱すことを恐れているかのようだ。
やがて、岩の間にひと筋の亀裂が見えてくる。亀裂は徐々に広がり、人がひとり、ようやく通れる程度の幅になる。そこを抜けると、鍾乳洞があるのだ。
まずルーウェンが先頭に立ってそこを抜け、続いてノルディス、しんがりがダグラスだ。
鍾乳洞は、これまでの洞窟とはまったく異なった空間だった。ランプの黄色い光に照らし出され、天井から垂れ下がった鍾乳石や地面から生え出たように見える石筍が、あちこちに折り重なるようになっており、広さの割には、見通しが悪い。歩ける道は曲がりくねり、枝分かれして、いくつもの小部屋に区切られているかのようだ。
と、ダグラスは足元の小石を拾い上げ、前方に軽く放った。まるで、それを合図にしたかのように・・・
3人の前方の岩陰から不意に光が現れた。その向こうに、いくつかの影がうごめいている。すわ、魔物が現れたのか! と緊張する3人。
「誰だ!」
ダグラスが叫ぶ。