そのあとは、とくにかわったこともなく、ふたりはストルデル川につきました。
「さあ、やぎのつのをさがそう!」
ルーディは、まものに気をくばりながら、かわらのくさむらに入っていきました。
「あたしは、ママにたのまれたやくそうを、つんでいくわ」
エルは、目につく草をかたっぱしからつんで、かごの中に入れています。どう見ても、ざっそうとしか思えないものもまざっていましたが。
かわらには、シャリオやぎが草をたべたあとがのこっていて、ふんがてんてんとおちています。
ルーディは、そのあたりの草をかきわけ、目をさらのようにしてさがしました。
しかし、なかなか見つかりません。
やぎのつのを見つけることができなければ、このぼうけんをしたいみがなくなってしまうのです。
「これじゃ、かえれないよ・・・」
もう少し先へ行ってみようか、と考えたルーディの足が、なにかにつまずきました。
「イテテテ・・・」
下を見ると、なんとそこには、りっぱなやぎのつのがころがっていました。
「わあ! 見つけた」
ルーディは、りょうてでやぎのつのを持ち上げ、日にかざしました。どろがついていますが、つのはどんなたからものよりもきらきらとかがやいて見えました。
きっと、本の“きし”も、たからものを見つけた時にはこんなきもちになったのでしょう。
「おーい、エル、見つけたぞ〜!!」
さけんで、ルーディはエルの方にかけていきました。
エルのかごは、草でいっぱいになっています。
「なんだ、ざっそうばかりじゃないか」
ルーディはあきれました。でも、エルは、
「ちがうもん。これ、やくそうだもん」
と言いはります。
ルーディは、やぎのつののどろをはらうと、たいせつそうに、じぶんのかごにしまいました。かごの中にはそれしかありませんが、ルーディはもう、だいまんぞくです。
その時、うしろの方から、手をたたくおとが聞こえました。
ふりむくと、そこにはシアママ、アイゼルママ、マリーおばちゃんの3人が、ほほえみながら立ってました。みんながはくしゅをしています。
エルは、
「あ、ママ!」
とさけぶと、アイゼルママにかけよりました。
アイゼルママは、かごをせおったままのエルをだいて、ほおずりしています。
ルーディは、ぽかんと口をあけて、シアママを見つめています。
シアママは、てれくさそうにわらって、
「ごめんね、ルーディ。あんまりしんぱいだったので、マリーにたのんで、つれて来てもらっちゃった」
と言いました。
そう言えば、マリーおばちゃんもアイゼルママも、ほうきを手にしています。
「“空とぶほうき”をつかえば、ひとっとびだもんね」
と、マリーおばちゃんはぺろりと舌を出しました。
やっとわれにかえったルーディは、かごからやぎのつのを取り出すと、むねをはって、マリーおばちゃんにさしだしました。
「はい、マリーおばちゃん、やぎのつのだよ」
「まあ、ほんとに見つけてくれたのね。ルーディ、ありがとう、うれしいわ」
マリーおばちゃんは、にこにこして、ルーディのあたまをなでてくれました。
ルーディは、だいとくいです。
シアママも、うれしそうに、そんなルーディを見ています。
「それじゃ、そろそろ帰ろうかしら。ばんごはんのしたくをしないと」
と、アイゼルママが言いました。
「そうね。早くかえらないと、日がくれてしまうわね」
シアママも言います。
マリーおばちゃんは、いたずらっぽくわらって、
「ルーディは、もちろん、ぼうけんをしながら歩いてかえるのよね」
と言いました。
「え・・・」
ルーディは、ことばにつまりました。
そっとエルの方を見ます。
エルは、アイゼルママにだきついたまま、言います。
「あたし、つかれちゃった。ママといっしょにかえるもん。ルーディおにいちゃんは、歩いてかえるの?」
ルーディは、やせがまんをして、言いました。
「うん、わかったよ。ぼく、歩いてかえる」
「そう。じゃあね」
と、マリーおばちゃんはほうきにまたがりました。
「ばいばーい」
アイゼルママにだかれてほうきにのったエルが、手をふります。
「気をつけてね」
シアママの声を聞きながら、ルーディはうしろをむいて、歩きはじめました。
でも、すこし歩いただけで、がまんできなくなりました。
「まってよ〜!! ぼくもいっしょにかえる〜!!」
さけぶと、ルーディは、ほうきにのってとびたとうとしているシアママにむかってかけだしました。
<おわり>
ウチのサイトの2周年記念にいただいた“アトリエ童話”です。「エリーのアトリエ」から10年ほど未来の話で、シアさんの子ども(ルーディ:なかじまゆら創作のオリジナルキャラ)が主役の話です。アイゼル様の子ども・エルローネは、○にさん創作のオリジナルキャラです。詳細は、○にさんのページにあるエリー創作小説にて。
冒険(ごっこ)のために裏でばっちりサポートしていたんでしょうねマリーさん。子どもに“とりあえず、体験させてみる”ことは、実際なかなか出来ることじゃありません。「やめなさい」と言う方がはるかに簡単で楽でしょう。いい小母ちゃんがいて、ルーディは幸せ者ですね♪